「社会的時差ボケ」を、ご存知の方は少ないと思いますが、この「社会的時差ボケ」によって、仕事に集中できないばかりか、健康にも悪影響を及ぼしてしまうようです。
2017年のノーベル医学生理学賞の受賞理由にもなった「体内時計」は、身体のさまざまな機能調節に関与しています。「哺乳類の時計遺伝子」が発見されたのは1997年で、体内の臓器、皮膚、血液などのあらゆる細胞の中に時計遺伝子が存在し、時を刻んでいることが分かりました。十数個の時計遺伝子が次々に見つかりましたが、代表的な時計遺伝子であるPeriod(ピリオド)、Bmal1(ビーマルワン)などの発見には日本の研究者が大きく貢献しています。
この時計遺伝子が作り出す体内時計によって、外からの時刻情報がなくてもリズムを作ることができます。地球上のほぼすべての生物は体内時計を持ち、地球の自転や公転、潮の満ち引きなど、天体活動によって生じるリズムにうまく同調することで、生存活動を有利にしています。しかし、体内時計を持たない生物は、地球上から淘汰され、存在することができなくなってしまいます。
睡眠や月経周期などさまざまなリズムがありますが、その中で最も研究が盛んで、よく知られているのが二十四時間周期のサーカディアンリズムです。朝になると体温や血圧が上がって活動の態勢に入り、暗くなると睡眠ホルモンが分泌されて眠りに誘われるなどの私たちが必要な時間にベストパフォーマンスを発揮できるように、体内時計は調整してくれています。
しかし、時計遺伝子が作り出す体内時計はいつも正確に時を刻んでいるわけではなく、体内時計の司令塔(中枢時計)が生み出す周期は、人では平均して24時間よりも少し長くなるので、毎日、時計をリセットしなければ正確な時間が刻めなくなるようです。そして、リセットに作用するのが、光や食事、運動なので、そのタイミングは、たいへん重要なようです。不規則な生活は、体内時計を大きく崩すことになり、健康には悪影響となるので、気を付けたいものです。
by 筋知良
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