「噛む」ことが長生きの秘訣であることは、厚労省が行なったプロジェクト研究で「口腔保健と全身的な健康状態の関係について」で報告されています。「何でも噛んで食べることができる」人を咀嚼良好者と言います。そして、その割合は50歳代で約75%ですが、70歳代で50%以下にに減少しているようです。咀嚼は食べるだけではなく、全身の運動機能や知能の発達、精神活動、病気にまで大きな影響を及ぼします。この調査では、歯を失って噛めない人は、寿命も短くなることを発表しています。また、「噛んで食べる」という人間本来の機能を回復させることで、寝たきりの高齢者が起き上がり、歩き出すという“奇跡的”な臨床例が数多く報告されています。そして、これらが文字通りの“奇跡”でないことは、数多くの研究や調査で確認されています。
さらに、よく噛むと血糖値を下げる効果があることも確認されています。「咀嚼と肥満の関連性に関する研究」(厚労省研究班)に関わった日本歯科衛生学会の研究チームの実験では、よく噛む「多咀嚼者」は少ない量で満腹感が得られ、食べる量が減る上、血糖値が上がりにくいという結果を発表しています。この実験は30回以上噛んだ場合と、それよりも少ない通常の噛み方を比較して、血糖値を調べたもので、よく噛んだ方が食後のインスリンの分泌量、ピーク量が少ないことが確認されています。よく噛むと歯の歯周組織である歯根膜や咀嚼筋からの刺激が、脳の神経に伝わり、食欲を抑制して満腹感をもたらす効果があります。それが食べ過ぎを防ぐことになるようです。
また、厚労省研究班は65歳以上の高齢者4425人を4年間にわたって追跡調査した結果、歯を失って噛めなくなった人は、認知症のリスクが約2倍も高くなることや、残っている歯が少ないほど記憶や運動などの能力が低下する傾向にあることも報告しています。つまり、噛む力を維持すれば、認知症予防や運動機能低下も防げることになるということです。
スポーツ選手がガムを噛んだり、マウスピースを利用したりしているのも集中力の向上や筋出力の上昇が確認されているからです。簡単に取り組めることなので、ちょっと意識してみてください。アレッと思う発見があるかもしれませんよ。
by ベクトル
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