運動をすると、筋肉から出るホルモンが、心筋を保護し、心筋梗塞などの予防・治療を促進することが、名古屋大学の研究で確認されました。心臓病は日本人の死亡原因の第2位で、心筋梗塞などの虚血性心疾患が代表的です。とくに糖尿病のある人は、虚血性心疾患のリスクが約3倍に上昇するという報告があります。動脈硬化や虚血性心疾患を含む心血管病を予防し、重症化させないための対策が重要とされています。心筋梗塞や狭心症を予防するためには、適度な運動が勧められていますが、運動の効果を分子レベルで解明した研究はほとんどありませんでした。
腕や脚の筋肉、腹筋、背筋などの体を支え、動かす役割を担っている骨格筋は、生理活性物質(マイオカイン)も産生する内分泌臓器でもあることが確認されて、15年程度です。そして、新たに骨格筋から分泌されるホルモンが、2型糖尿病などの代謝性疾患や心血管疾患の病態に関わることが明らかとなりました。名古屋大学の研究チームは、骨格筋から産生・分泌されるホルモン(マイオカインの一種のマイオネクチン)に着目し、研究を進めてきました。
研究チームはマウスを用いて実験したところ、マイオネクチンを産生しないマウスでは、心臓の筋肉に血液が十分に行き渡らなくなる状態から、心臓の閉塞した血管を再び開通させても、心筋梗塞サイズの増加と心機能の低下がみられ、心筋組織内の細胞死と炎症反応の悪化もみられました。一方、マウスにランニングマシーンで運動を行わせると、マイオネクチンを産生するマウスでは、血中マイオネクチン濃度は上昇し、心筋組織内の細胞死と炎症反応が抑えられ、心筋梗塞サイズが縮小しました。
これらのことから、マイオネクチンには抗細胞死作用と抗炎症作用があり、心筋保護作用があることが確認されました。さらに、適度な運動によってマイオネクチンが血中に増えるのは、骨格筋に多くあるからとの見解です。また、心筋組織にはほとんどなく、心筋虚血の発症前にマイオネクチンを全身投与すると、投与しない群に比べ、心筋梗塞のサイズが縮小することも分かりました。
運動療法が心筋梗塞や狭心症を予防するメカニズムとして、骨格筋から分泌されるマイオネクチンが運動によって増加し、心筋組織に直接作用し、細胞死や炎症反応を抑制して虚血性心疾患に対して保護的に作用します。つまり骨格筋でつくられるマイオネクチンを血中に増やせば、心臓を保護する作用を得られるということです。
心臓が悪いと安静にと言われていたのは、過去の話で、現在は心臓が弱い、良くない方こそ運動が必要なことが分かってきました。今日から始めたいです。
by 筋知良
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