熱や痛みで病院を受診した際に、ロキソニンやブルフェンなどのNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)を処方されたことがある方も多く、感染症などの熱が出る病気や痛みが伴う傷病のときにはよく処方される薬剤です。また、ロキソプロフェンは、2011年からはロキソニンSという商品名で市販薬も発売開始されています。
しかし、新型コロナの流行が始まった頃から、ロキソニンなどのNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛薬)を鎮痛解熱剤として使用すると新型コロナを悪化させる可能性がある、という仮説がありました。2020年3月14日にフランスのヴェラン保健大臣がツイッターで「新型コロナウイルス感染症に罹ったらイブプロフェンなどの薬を飲まないように」という趣旨の発言をしました。これは、フランスのある医師が、感染早期にNSAIDsを飲んだ後に4例の若い新型コロナ患者が重症化した、という経験をもとにしたものであったようです。わずか4例で「新型コロナにNSAIDsは良くない」とは言えませんが、当時これを支持するような仮説も提唱されていました。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して標的細胞に結合し侵入することが分かっています。ランセット誌では「イブプロフェンが体内のACE2を増やし、これによって新型コロナウイルスの感染が増強されるのではないか」という仮説が掲載されました。また、抗体の産生も抑制してしまうのではないかという研究もあったことから、新型コロナに対してNSAIDsは使用しない方が良い、という風潮になっていました。
新型コロナの流行開始から1年以上が経ち、この「NSAIDsは新型コロナを悪化させる」という仮説を検証するための研究がいくつか報告されています。韓国からは良くないという結果ですが、デンマークやイスラエルからは対照的な結果が報告されています。また、WHOやNIHなどの海外の機関も、「必要時にはNSAIDsの使用は控えるべきではない」と言っています。つまり良いか、悪いかは、何も分からないということです。そして、ワクチン接種後の鎮痛解熱剤も同様で、良いか悪いかは分かっていないようです。つまり現時点での新型コロナウィルス感染症の対策も良いか、悪いかは、最終的には、我々自身が判断しなければならないのだと思います。
by 珍香鈴
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