「免疫力を上げる」「免疫力を高める」という宣伝文句をよく耳にしますが、免疫を研究している専門家は、疑わしい医療情報について警鐘を鳴らしています。
血液中には、赤血球、白血球、血小板などの細胞が存在しています。白血球は、多くの種類に分けられ、その中でもリンパ球と呼ばれる細胞集団が免疫では重要な働きをします。例えば、体の中でがん細胞ができたとき、免疫の力で攻撃する戦力となるのがリンパ球の“キラーT細胞”で、もともとはウイルスなどと戦い、体を防御するために存在する細胞です。そして、戦うだけでなく、戦っている戦士の暴走を食い止めたり、コントロールする“制御性T細胞”は、免疫細胞が安全に働くようにコントロールしています。
慶応大学の研究グループは、腸内細菌の一部が“制御性T細胞”を増やすことを発見しました。また、米国の研究グループが、ビフィズス菌の一部ががん免疫療法の効果を増強させることを報告しています。この研究ではビフィズス菌が、免疫の司令塔の役割を果たす樹状細胞に働きかけ、結果としてキラーT細胞の戦力が高まることが確認されています。このほかにも、腸内細菌が免疫細胞に影響を与える論文は数多くあり、人間の体に共存している無害の細菌叢と免疫が密接に関わり合うことが証明されつつあります。
しかし、腸内細菌と免疫を絡めた研究の多くは、ネズミの体の中の話であり、遺伝子操作の技術の発展によって特定の細胞の機能を見ることができますが、人の体で実際にどうかというとまだはっきりと確認されていません。ネズミであれば治せる病気は数多くありますが、人となると治療に結びつかないケースはザラにあります。
つまり、現時点で言えることは、腸内細菌と免疫の関係はわかっていないことが多いので、「免疫力を上げる」という言葉を見たら、まずその説明を疑うほうが良いようです。
by グランブラー
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