肝臓や腎臓などの腹部の臓器は、「沈黙の臓器」等と言われて痛みや異常を訴え難いと言われています。その理由は、内臓の痛覚は、平滑筋・心筋・腺・内臓粘膜に散在する侵害受容器の興奮によって生じますが、臓器に存在する侵害受容器の数は比較的少なく、更に伝達速度が遅く、そして、鈍い信号を伝えるC線維(IV群線維)によって中枢にもたらされるので、鈍い痛みで、その局在性も不明確です。局所的な虚血や血流障害によって、局所に蓄積される発痛物質が関与することがあったり、炎症のある部位などでは、発痛物質により痛みが生じやすくなりますが、ほとんどの場合分かり難いことが多いです。
また、その信号は、周囲の骨格筋の反射性収縮(筋性防御)、感覚異常、関連痛の成因となり、さらには吐き気・発汗・血圧 の変化などの自律神経反射を引きおこすことがあります。更に、内臓痛の局在性が不明確である要因は、内臓痛の情報は、分枝をつくり多くの脊髄分節に入力されることがあげられること、一本の侵害受容ニューロン がうけもつ受容野の広さは、皮膚では狭いのに対し、内臓では広範囲であることにもよるモノと考えられます。
例えば、胆石、胃十二指腸潰瘍、尿路系結石、イレウス(腸閉塞)など の場合にみられる激しい仙痛は、局所の侵害受容器の興奮によって生じ、臓器に炎症があると、その部位で産生・遊離される炎症の化学伝達因子が発痛物質として働き、自発痛を起こします。このメカニズムによって起こるモノとしては、腹膜炎の場合にみられる腹痛などが代表例です。また産生された発痛物質の量が少なくても、その刺激は炎症のある部位での侵害受容器の他の刺激に対する感受性を高める働きがあります。狭心症でみられる胸部の絞扼痛(狭心痛)の原因は、心筋の虚血で、つねに収縮と弛緩をくりかえしている心筋において,冠状動脈の狭窄または閉塞により虚血が生じると、代謝産物がその組織 に停滞し、これらが発痛物質として作用し、冠状動脈を攣縮させて痛みを引き起こします。痛みの有無が、傷害の大小を決めるわけではないので、身体の信号、状態をしっかり確認したいですね。
by グランブラー
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