嗜銀顆粒性(しぎんかりゅうせい)認知症(AGD:Argyrophilic Grain Dementia)という名称を初めて聞く方も多いと思いますが、様々な認知症の内の一つです。介護職の方、高齢の家族がいる方でも、この名称をご存知ない方も多い様です。一般的にアルツハイマー病ややレビー小体認知症などが広く知られていますが、高齢者のおけるAGDの頻度は約5~10%と推定されています。
嗜銀性顆粒とは、脳内に嗜銀性顆粒状の構造物を病理的特徴とする疾患で、1987年ドイツの学者の認知症者の検脳で初めて報告されました。銀染色により紡錘、コンマ状に描写されていたことで、この名が付きました。しかし、脳細胞や組織を採取し、顕微鏡を使って観察する病理診断が必要ですので、生前には診断できません。アルツハイマー型認知症と比べても発症時期は遅く、進行も遅いとされています。80~90歳以上の高齢者の発症ケースが多いので、発症時期が疾患を見分ける基準の1つとなっているので判別は難しいと思われます。
人の名前や顔を忘れる、時間がわからない、外出したまま帰宅できなくなる、自分の直近の行動を思い出せなくなる等の記憶障害がおもな症状のアルツハイマー型と異なり、AGDでは、頑固になり、怒りっぽくなったり、被害妄想も増えることもあり、性格変化が強く現れるのが特徴です。また物忘れがあっても、日常生活が十分行えるようなレベルで、認知症診断テストなど高得点の方も多いとのことです。
「長谷川式スケール」を開発者で認知症医療の第一人者の故長谷川和夫さんが、嗜銀顆粒性認知症と公表したことは有名です。50年以上も認知症の研究をされ誰よりも詳しいとされる方ですので、予防法も、治療法も熟知されていたはずです。「パーソン・センタード・ケア」(その人第一に、その人を中心にしたケア)普及に努力し、ケアの分野でも大きな足跡を残された長谷川さんが公表することで、誰でも認知症になる可能性があるだけでなく、現状の取り組みがまだ不完全であることを確認しました。
by 健幸運動志同士 みさぽん
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