小腰筋は、腹部の深層に位置する細長い筋肉で、大腰筋より深層に位置しており、普段はほとんど意識することがないインナーマッスルの一つです。40~60%の人に存在していないと言われていますが、インナーマッスルの一つであるため、実際に存在しているかどうかを解剖なしに確認するのは非常に難しく、MRIなどでは確認できないので存在しないという意見が主流になっています。しかし、小腰筋は、腰椎から骨盤にかけて伸びており、腰部の安定性と屈曲に関与して大腰筋と違った作用があり、大腰筋の分枝と言う理由で存在しないというのは疑問が残ります。
小腰筋の始まりは、第12胸椎と第1腰椎で、腸骨筋膜の内部を通り、腸恥隆起もしくは腸恥筋膜弓の内部で終わります。支配神経は、腰神経叢のT12~L2によって支配されます(本によっては、L1の枝、また、L1、L2と記述されているモノもあります)。作用は、腰椎の屈曲を補助し、体幹を前屈させる動作に関与していて、腰椎の安定性を提供し、姿勢の維持に貢献します。日常動作においては、体を前に曲げる動作を補助し、座位や立位での姿勢を保つために腰椎を安定させます。そして、腹部の圧力調整を助けることで、呼吸にも間接的に関与していることも確認されています。
小腰筋は、大腰筋からの分束と記述する文献が多々ありますが、脊柱の安定性や姿勢の維持に重要な役割を果たしたり、体を横方向に屈曲させる動作や片側に傾ける動作に関与し、腰部の運動において重要な機能を担っていることを考えると存在しないということに異論を唱える専門家も多くなっています。大腰筋に隠れることが多く、見つけ難いことで存在しないという解釈になったと思われ、支配神経も様々な記述が多いことも小腰筋の実態が掴めていないことが確認できます。この筋肉の取り扱いの良し悪しが、腰痛や姿勢の改善に繋がる可能性は高いので、しっかり確認していきたい筋肉の一つです。
by 筋知良
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