長距離ランナーなどでみられる“ランナーズハイ”は、取り組んでいることに熱中し過ぎることで見られる生体の反応です。この陶酔感や苦痛の軽減は、スポーツによってモルヒネに似た物質が体内で分泌されることで出現します。1970年代、モルヒネに特異的に結合する受容体(受け皿)が脳のなかにあること、次いで、この受容体に結合する物質が体内にも存在することが発見されました。そして、この物質こそが内因性モルヒネ様物質(エンドルフィンなど)であり、痛みの伝達に関わっている受容体に結合して苦痛の軽減する作用を発揮することが確認されています。この受容体は、大脳辺縁系(感情や記憶に関係する脳の部位)や視床下部(ホルモンの調節を行っている部位)などにも存在します。スポーツをしたり、何かに熱中したりしている時に内因性モルヒネ様物質が分泌されて鎮痛効果を発揮し、さらには大脳辺縁系への好影響によって気分の高揚をもたらします。
また、痛みは、その人が置かれている状況にも左右されます。ベトナム戦争当時の米軍の研究では、前線の兵士が傷を負って病院に担ぎ込まれた場合、重傷であれば痛みをほとんど訴えませんでしたが、軽傷だと訴えが大きかったとするデータがあります。これは、重傷だと名誉の負傷として前線から離脱できますが、軽傷では簡単な治療の後に再び前線に送り出されるからだと見られています。つまり、悲嘆の度合いは軽傷の方が大きかったため、それに伴って感じる痛みも強くなったと考えられます。デカルトが唱えた「教会の鐘理論」(刺激の強さと痛みの強さは比例するという考え方)に反する結果でした。
いずれにせよ、人の身体は、苦痛に対して色々な仕組みで軽減させたり、増幅もさせるようです。慢性の痛みを持っている方は、できるだけ前向きな考え方をする方が軽減される可能性は大きいと思われます。
by スカラー
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