古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは、「動物部分論」の中で、「知覚の波が血管に沿って心臓に伝わる。その波があまりに激しい時、痛いという情緒が生まれる」と記していて、痛みを情緒として捉えて、“五感”には含めなかったのは、痛みを“快”の対極にある“情動”のひとつと考えていたからです。
その後、20世紀に入ってからも、「痛みは感覚なのか、情動なのか」についての論争は続いていましたが、痛み情報が末梢神経の感覚線維から脊髄を通って脳に伝えられていることが解明されて以降は、五感のひとつとして扱われています。
しかし、このアリストテレスによる“痛みは情動”との考え方は、あながち間違いとは言えません。喜びや悲しみなどの本能的な感情、人に特有な憎しみや尊敬といった感情によって生じる体や表情、行動の変化を合わせたものを示すものを情動と呼んでいますが、日本語では、「はらわたが煮えくりかえる思い」「断腸の思い」など、情動と痛みを絡めて表現することがあるように、痛みとは、情動を巻き込んでしまう厄介な感覚であると言えます。
そして、痛みの強さに影響を与える因子には、心理状態、気持ちの持ち方などさまざまなものがあります。たとえば、慢性痛を抱えていても、仕事や趣味に熱中している時には、痛みが軽くなることを経験された方も多いと思います。また、痛み情報は、末梢神経から脊髄を経由して大脳皮質に届けられますが、同時に大脳辺縁系(脳の一部で、感情、欲求などにも関わることから“情動脳”とも呼ばれている)に悪影響となり、感情に変化が起こり、不安を生じさせます。さらに、不安が痛みを増幅するので、痛みは気からとは逆に、痛みが“気”(感情)を障害することだってあると言えます。
痛みは、不快なモノですが、我々の身体を守る信号なので、痛みが起こったら何が原因かを確認することです。原因が分かれば、不安や不快感も軽減されます。くれぐれも痛みをすぐに鎮静剤で済ますようなことだけはしないようにしてくださいね。
by グランブラー
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