東京都医学総合研究所の研究グループは、空腹状態になると記憶力がアップする仕組みを、ヒトの記憶メカニズムと共通性をもつショウジョウバエを使った実験で証明しました。研究グループは、記憶についてショウジョウバエを用いた過去の研究を検証したところ、ハエに1つの匂いと電気ショックを同時に与えると、その匂いを電気ショックと関連付けて学習し嫌いになる「嫌悪学習」が生じます。しかし、嫌悪の記憶が“長期記憶”として保存されるには、1回だけの学習では不十分で、15分間隔で何度も復習させることが必要となります。一方、1つの匂いと砂糖水を与えると、ハエはその匂いが好きになる「報酬学習」となります。この報酬の記憶は1回の学習だけでも長期記憶になることが分かっていました。ところが、報酬学習の実験では、効率的に砂糖水を飲ませるために、ハエを空腹状態にしていたことが判明したました。
「空腹状態が長期記憶を作るために重要ならば、空腹状態にしたハエに嫌悪学習をさせれば、1回の学習でも長期記憶ができるはず」と推測し、研究グループは、ハエを絶食させた後に1回だけ嫌悪学習させて1日後に記憶を確かめてみると、予想通り長期記憶として保存されていました。記憶していたハエの割合は9~16時間絶食させた時が最も高く、満腹状態の約2倍あったということです。
長期記憶のメカニズムはショウジョウバエから哺乳類まで共通しており、脳の神経細胞では「CREB(cAMP応答配列結合タンパク)」というタンパク質が必要となります。空腹時には血液中の糖分(血糖値)が低下し、その結果、すい臓からのインスリンの分泌が低下します。インスリン低下によってCREBは活性化することから、長期記憶につながると考えられます。
これらのデータから「勉強するには食前がよい」と言えるようです。また、脳細胞の活性化は再三言っていますが、身体を動かすことが一番です。食事制限と合せて行うと脳の働きはグ~ンと高まると思われます。
by ベクトル
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