コラム

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胸腺の病気

 以前のブログ(2020.02.20掲載)で胸腺の役割について書かせていただきましたが、今回は胸腺の病気について書かせていただきたいと思います。
 胸腺は、上縦隔に位置する一次性リンパ器官です。生後間もない時期の体重比で胸腺は最大となりますが、臓器重量として最大になるのは思春期です。思春期を過ぎると脂肪が入り込んで4分の1程度まで退縮します。その過程において腫瘍化したものを胸腺腫、もしくは癌化したものを胸腺がんと呼びます。胸腺腫は40~70歳に多く、腫瘍細胞が増殖するスピードが比較的ゆっくりとしています。胸腺腫は肺癌などと比べると転移しにくい比較的良性の腫瘍で、5年生存率も約80%あります。一方で、胸腺癌は幅広い年齢で生じます。また、浸潤性が強く転移しやすいことが特徴です
 胸腺腫と胸腺がんは、周囲の組織に直接影響を与えるほど大きくならない限りは無症状です。癌が進行すると、咳、胸痛、呼吸困難などの症状が出ます。また、血液の流れを止めるような部位に腫瘍が発生した際は、顔面や首に、うっ血や浮腫などの症状があらわれます。また、胸腺腫の方は、免疫系などに関連した他の病気を持っている場合があり(重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、多発筋炎など)、これらの症状から病気が見つかることもしばしばあります。特に、胸腺腫の30~50%が重症筋無力症を合併しているとされており、両者には因果関係があると考えられています。
 重症筋無力症は自己免疫疾患の一つで、原因は神経と筋肉の命令伝達を妨害する自己抗体になります。症状は筋肉の易疲労性が特徴で、特に夕方になると「瞼が下がってしまう」や疲れてくると「物が二つに見える」といった眼の症状が多く見られます。ついで易疲労性は体全体にもおよび、更に嚥下不能、声が鼻に抜けてしまうといった症状も現われます。最も重症化すると呼吸をする筋肉にも及び呼吸困難を起こす場合もあります。しかし、胸腺癌では重症筋無力症を認めることは非常に珍しいようです。
By ルン
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