幼少期の子どもの動きを観察していると、非常に柔らかくて柔軟性の高い動きをしていることが確認できます。しかし、この柔らかさは、一般的に柔軟性があると言われる大人の柔らかさとは違うことに気付く方も多いと思います。一般的に柔軟性は、特定の関節の可動域の大きさと認識しがちですが、子どもの柔軟性はそれとは異なります。子どもは体全体の筋肉や関節が連動して、無理のないしなやかな動きをしています。子供の前屈は、首・肩・背中・腰・股関節・膝・足首の全てが前屈運動に参加し、結果的に動きが柔らかく見えているのです。大人になると筋力が増し、全身の筋力を使わなくても体を動かせるようになり、部分的な関節、筋肉の動きになっていることがほとんどです。全身の関節や筋肉が、うまく使われた方が負担が分散されるため疲れ難く、また怪我をし難いのは分かり切ったことなのですが、省エネが優先されてしまうようです。日々の仕事、家事、趣味などの日常生活や運動の場面で、体の使い方が不適切であっても、その場ではさほど問題は現れません。しかし、誤った体の使い方をし続けることにより、体は誤った動きが通常の動き方であると学習してしまい、いつの間にか全身を連動させた動きができなくなってしまいます。
例えば、「しゃがむ動作」は、下半身3つの関節(股関節、膝関節、足関節)と、その周辺の筋肉に着目して動作分析をするのが一般的です。しかし、「しゃがむ動作」において、全身の関節(手指関節から足趾関節まで)と、全身の筋肉に着目して動作分析を行い、さらに、単関節運動として考えられがちな手足の関節などの動作に関しても、動きの部分から離れた関節にも着目していくと動きの障害になっている部分が見えてくることが多いです。
一般的に『私は前屈が苦手でできない』と言ったら、筋肉に焦点を当てて、ハムストリングスや腓腹筋など、背面部の筋肉の伸張の硬さが原因であると考えがちですが、腹直筋や大腿四頭筋、前脛骨筋などの前面部の筋肉の収縮作用が消失・減退していると捉えることもできます。低年齢の子供やトップアスリートのように、連動性が高く、背骨の関節一つ一つが連動して動く人であれば、前屈では、背骨が丸みを帯びた屈曲アーチを描き、背面部以外の作用も伴っています。
by グランブラー
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