日本人の死因の1位である「がん」の発症は、その人の生活習慣と密接に関わっていることが知られています。例えば、肺がんは、喫煙だけでなく、受動喫煙や浅い呼吸(口呼吸)によっても発症リスクが上がると言われています。
国立がん研究センターでは、国内外の最新の研究結果を基に、日本人のがんと生活習慣との因果関係の評価を行い、ホームページで公開しています。この評価は、「データ不十分」⇒「可能性あり」⇒「ほぼ確実」⇒「確実」の順に科学的根拠を基に位置付けられています。この評価によると、大腸がんのリスクを高める要因の中で「確実」になっている唯一の要因が飲酒です。次に信頼性が高いのが「肥満」で「ほぼ確実」となっています。20万人を対象とした調査では、男女ともに過度の飲酒で大腸全体、そして結腸、直腸がんのリスクが上がるという結果になりました。
男性では、飲まない人と比較すると1日に摂取する酒量が、缶ビール(350ml)2本以下で、約1.4倍、3本で約2倍、5本で約3倍とアルコールの量に比例して、リスクが確実に高くなっています。女性の場合も、男性ほど顕著ではないものの、アルコールの1日摂取量でリスクが上がると報告されています。日本人は人種的に見てもアルコール耐性が弱い人が多く、アルコール耐性の強い欧米人は、1日2合(缶ビール2.5本)程度の飲酒では大腸がんのリスクが上昇していないのに対し、日本人は1.4~1.8倍もリスクが上がります。
飲酒が大腸がんを引き起こすメカニズムは、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドに発がん性があり、これを分解する酵素の働きが悪い人(遺伝的にアルコール耐性が低い人)や、日常的に多量飲酒が習慣化している人は、アセトアルデヒドの毒性にさらされる時間も長くなることが考えられていました。しかし、アルコールの代謝に関わる遺伝子型と大腸がんの関連性を調べた最近の研究では、遺伝的な体質ではなく、腸内細菌の働きによってアルコールから生成されたアセトアルデヒドが葉酸の吸収や働きを阻害することにより、大腸がんの発生リスクが高まるのではないかという説が有力になっています。
飲酒が確実にリスクを高めるがんは、大腸がんだけでなく、食道がんや肝臓がんもありますので、適量飲酒を心がけたいものです。
by ボヤッキー
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