一般的に背骨のことを脊柱と言い、これを起立させるために働いているのが脊柱起立筋群です。背中の深い層に存在し、脊柱の左右を頭から腰にかけて長く走行していますが、「筋群」と言い換えたとおり、多くの筋の集まりの総称です。背中を触ってみると、脊骨の部分は凹んでおり、その両わきの背筋部分は高く盛り上がっています。この盛り上がりを形成しているのが脊柱起立筋群です。脊柱側にあるものから順に、棘筋、最長筋、腸肋筋で構成されています。さらに、それぞれを上中下の位置ごとに、棘筋は頭棘筋・頸棘筋・胸棘筋、最長筋は頭最長筋・頸最長筋・胸最長筋、腸肋筋は頸腸肋筋・胸腸肋筋・腰腸肋筋の名称が付いています。それぞれの筋の付着部と走行が微妙に異なり細分化しているため、脊柱の柔軟な動きに対応できるようになっています。
地球上に生きる我々には絶えず1G(その人の体重分)の重力がかかっているわけですから、重たい頭を乗っけた脊柱を重力に負けないようしっかり立たせている脊柱起立筋は、常に筋力を発揮している状態です。勿論、物を持ち上げたり、椅子から立ち上がったり、ジャンプするときに素早く上体を起こすといった様々な動作時には、安静にしている時以上の収縮力が必要となります。
ヒトの脊柱は、正常姿勢ではゆるやかなS字カーブを描いていて、頸椎(首の骨)は、前に湾曲し、胸椎は後ろに湾曲し、腰椎は前に湾曲しています。椎骨がまっすぐ直線上に積み上げられた状態では、重力下で歩いたり、走ったりする衝撃に耐えることができません。脊柱のカーブを保っておくには、身体の前にある腹筋群と、身体の後ろにある背筋群がバランスよく働いている必要があります。脊柱起立筋群が相対的に弱い場合、脊柱を立てる方向に引っ張っておくことができず、重力に負けて背中がまるくなり、椅子の坐面に対して骨盤を立てて坐骨で座るというよりは、尾てい骨あたりで座っているような姿勢になります。普段、家でだらりとテレビを見ているような時、気を抜いていると背中が円くなっている人は多いと思います。これらが続くと脊柱を伸ばして保てず、背が円くなってしまいます。背を円くさせないためにも、まず毎日の姿勢を意識することが大切です。重力に負けた「老けた」姿勢にならないよう、気づいたときにその都度背すじを伸ばすようにしたいですね。
by 筋知良
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