一度症状が進行すると、改善は難しいとされる認知症ですが、現状は、早期に治療を開始して少しでも進行を遅らせることに重点が置かれています。日本神経学会が定める「疾患診療ガイドライン」では、非薬物療法とともに抗認知症薬の使用が推奨されています。そして、実際に65歳以上の5.1％、85歳以上の17％に認知症治療薬が処方されていますが、その効果は限定的なようです。
　認知症治療薬の有効性についての臨床試験結果を分析した兵庫県立ひょうごこころの医療センターの研究でも、認知症薬により「高い効果が得られた」患者の数は、40人に1人で、「多少は効果がみられた」患者でも7人に1人程度だったと報告されています。また、認知症治療薬には、副作用として便秘や下痢、吐き気、眠気、ふらつき、めまいなどが現われることがあり、肝機能障害や不整脈なども引き起こす場合もあるようです。それらのリスクと、得られる効果のバランスを勘案した結果、フランスでは昨年8月にそれまで認められていた4種類の認知症治療薬すべてが保険適用から外されました。
　認知症・高齢者総合内科の専門医は「認知症学会が認定した認知症専門医は、2000人ほどしかおらず、多くの人が非専門医の診察を受けていて、薬なども処方されていることがほとんどです。訓練された専門医であれば認知機能を多角的に評価可能なため、薬の効果が出ているかどうかを的確に判断できたり、安易な薬物治療を避けたりできると思います。もし、認知症の可能性がある場合、脳神経内科を掲げる医療機関を訪ね、可能なら認知症専門医の診察を受けることが望ましいようです。
　改善が難しい認知症だからと言って、薬に頼るのではなく、ご自身で改善できる方法もたくさんあります。諦めずに取り組むように努めていただければと思います。
by　珍香鈴

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