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長掌筋

 長掌筋は、腕から手首にかけてつながっている細長い筋肉で、上腕骨内側上顆、前腕筋膜内面から橈側手根屈筋の尺側にそって下って手掌腱膜で停止しています。手首を曲げる、物をすくうなど手首の関節を使う時に、手の膜に緊張を与えるのが主な役割といわれていますが、人差し指、中指の過度な上下運動で筋肉痛になることがあります。手首を軽く曲げ、母指と小指を対向させると長掌筋の腱を浮かび上がらせて確認することができるので、目立つ筋肉だと思います。
 長掌筋は、ヒトが樹上で生活していたころの名残と言われていて、サルやなどの木の間を移動して生活する哺乳類は、長掌筋も強靱です。しかし、地上で生きることを選んだヒトは、必然的に木に登る機会も減ったため、長掌筋を使う機会が減ったこと、また、手首を曲げるのに使う橈側手根屈筋、尺側手根屈筋と呼ばれる筋肉が、長掌筋よりも強く働くので、この筋肉が“いらない”筋肉と言われるようになりました。さらに、長掌筋の有無によって握力や筋力に差がないことも判明したことも身体に影響がない、不要な筋肉とされています。
 長掌筋は取り除いても身体にほとんど影響がないため、指の腱や靱帯の補強・再建のために使用されることがたびたびあります。特に「トミー・ジョン手術」という肘の靱帯断裂の際に行われる再建術は有名で、肘を酷使する野球の投手がよく受ける手術として知られています。プロ野球選手の松坂大輔選手や、ダルビッシュ有選手、大谷翔平選手、その他メジャーリーガー含む世界のトップ選手たちがこの手術を経験し、復帰を果たしています。彼らの華々しい活躍の陰には、「いらない」といわれた長掌筋の存在があったのです。しかし、人間の身体の機能については、現代の医学では、分かっていないことがまだまだたくさんあります。長掌筋についても知られざる機能が解明され、不要な筋肉という不名誉なレッテルを剝がすことになるかもしれません。
by 頃僕来
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